都市計画論文集
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中華民国期蘇州における都市改造と住宅地開発に関する研究
箕浦 永子
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ジャーナル オープンアクセス

2008 年 43.3 巻 p. 151-156

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抄録

本論文は、中華民国期蘇州における都市改造と住宅地開発について考察する中国近代都市計画史研究である。民国期、国民政府は都市改造計画を主導したが、蘇州でも1927年に『蘇州工務計画構想』を制定し都市改造に着手した。しかし、蘇州のような伝統都市では、新市街地形成よりも既存の市街地における都市問題の解決が最優先された。既存道路の整備・拡幅と新規道路の設置、水路の衛生改善や埋め立て、公園や野菜市場の設置、既存建築物の改善などに力が注がれたのである。また、古代より行政の中心であった「市中心区」は、都市公園や体育場、近代教育に基づく学校など、近代的な思想を背景とする施設が設置され、公共性を有する文教地区として再生された。一方で、民間による住宅地開発も1930年代に活発化し、個人・金融機関・富裕な役人や投資家などによって近代の住宅地が形成されていった。近代住宅の建築形式は、里弄形式と洋館形式が存在したが、上海の同時期のものと類似点がみられた。蘇州のような伝統都市では、現実的な都市問題の解決を優先させながら、緩やかに近代都市へと移行していたことが明らかとなった。

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© 2008 公益社団法人 日本都市計画学会
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