抄録
本研究は、バルセロナの旧市街における一連の都市再開発を担ってきた開発主体、とりわけ旧市街開発公社(PROCIVESA)の活動に着目し、(1)開発公社の内在的な特徴を明らかにし、いかにして官々連携、官民連携が図られてきたのか、(2)いかにして資金調達の流れが生み出されたのか、(3)旧市街の再開発過程において開発公社が果たした意義は何か、(4)わが国の再開発会社との相違点は何か、について考察することを目的とする。開発公社の最大の目的は、居住地としての旧市街の環境再生のために、土地収用を行い、立ち退き対象者となる従前の住民に代替住宅を提供することであった。開発公社の資金供給の主な手段は、土地の収用とそれを活用した不動産活動であった。これにより、再開発の過程で生じる負債の返済を容易にし、事業実施に資金を与え補助金を通して事業の変動を抑えられるようにした。持続可能な事業を展開するために、市以外の公的な組織と積極的な連携を構築し、中古流通市場から住宅を数多く購入し、修復に取り組んだ。