抄録
本論説では、個別法の体系・プロセスとの関係からみたSEA導入の論点を明らかにした上で、現在の都市計画制度に導入した場合に起こりうる様々な問題と改善の方向性について、先進自治体へのヒヤリング調査で補足しつつも主には既存文献による既知の情報や見解から論述する。SEAのいくつかの理念は、現行の都市計画制度の欠陥に対応するものが多い。たとえば政策・計画段階での評価実施は都市計画制度の体系や権限の曖昧さを、住民参加プロセスの透明性確保は都市計画決定のあり方を、累積的影響の評価のあり方は土地利用規制の弱さや根拠の問題点を浮き彫りにする。既存の都市計画制度の体系・プロセスとSEAの理念・原則の間にはかなりの開きがあり、都市計画制度へのSEAの導入には、現行のアセス法や先進自治体のSEA条例・要綱の手法を越えた様々な工夫が必要と考えられる。