抄録
空間分割は、都市に見られるもっとも基本的な空間構造の一つである。行政区、郵便番号区、選挙区、学区などの人工的な区割り構造や、商圏、駅勢圏、さらには土地利用、土壌、植生といった自然環境に関わるものまで、一つの地域に多様な空間分割が存在している。こうした空間分割は、その形成において互いに影響しあうことが少なくないため、その分析では、相互間の関係を正しく理解することが必要不可欠である。その方法としては、例えば各空間分割の特徴を示す指標値(区域の平均面積、周長など)を計算し、それらを比較するという方法が考えられる。しかしこの方法では、指標の計算が比較の前に行われるため、空間分割間での領域配置の差異が反映されないなどの難点がある。この問題を避けるには、空間分割同士を直接比較し、その後に集計を実施する必要がある。そこで本論文では、空間分割間の関係性を体系的に記述し、分析に適した明快な形で可視化する手法の提案とその適用を行う。特にここでは、空間分割という構造を特徴づける性質の一つである、分割間の階層性に着目し、階層的な類似性という視点を取り入れた手法を提案する。