2008 年 43.3 巻 p. 103-108
商店街などの都市商業集積は、都市商業空間の重要な構成要素の一つであるが、近年は再開発ビルの開業や大型店舗の進出により変化が見られる。都市計画上、その正の効果を活かし、負の効果を抑えるためには、開発の影響を適切に把握することが重要である。本研究はその基礎分析として、詳細な時系列建物データを用いて、中規模商業集積での建物の立地と用途の変化を沿道単位で分析する手法を提案する。まず、商業集積の核となる基点を設定し、基点からの距離と各地点までの商業と住宅の累計延床面積をプロットする。その際、道路間・地域間比較のため、対象区間延長と延床面積合計で基準化する。次に、沿道での延床面積の分布特性を表す指標を計算し、その時系列変化を読み取る。さらに、年次間での集積傾向の変化を示すグラフを描き、その傾向を把握する。実証研究では、東京都内の二つの商業集積において、再開発により商店街の範囲が縮小し、店舗跡地は住宅用途への転用が多く見られた。また、再開発を契機に、このような変化が進行した要因として、商業床需要の減少、地価下落、住宅地としての好立地性、周辺地域との容積率規制の差異などに注目して仮説を導いた。