2009 年 44.3 巻 p. 319-324
本研究の目的はニューオリンズ市を13の地区単位に分けて、世帯数回復率および州住宅再建支援プログラム受給者の居住地選択を復興を見る指標として位置づけて、それらと地域の属性、住宅被害率との関係を明らかにすることである。研究の方法は、既存の復興状況のデータを活用した分析、関係者へのインタビューによって行われている。全体的な傾向としては、災害3年目の時点においては地区の大規模住宅被害率が世帯数回復率と居住地選択に最も大きな影響を与え、13地区全体の傾向でみた場合においては地域属性は直接的には影響を与えていないことが明らかになった。しかし、Lower 9th Wardは世帯数回復率および居住地選択のいずれにおいても全体の傾向から大きく離れ、さらにBywater地区、Lakeview地区、Gentilly地区の三地区は同程度の住宅被害率を示す他の地区よりも転出しての割合が高くなっている。これらの事実は、これらの四地区の復興には住宅被害率や地域属性だけにとどまらない要因が影響を与えていることを示唆している。