2009 年 44.3 巻 p. 325-330
2004年12月26日に発生したスマトラ沖地震・インド洋大津波により、インドネシア、アチェ州ムラボーでは、多くの人が家を失い、仮設住宅での生活を余儀なくされた。被災から数年間が、被災者が被災経験を精神的・社会的に乗り越える重要な時期であり、その重要な時期を過ごす仮設住宅においては、人間関係やコミュニティの構築が重要である。本研究では、聞き取り調査と観察から得た質的データを解釈的アプローチにより分析することで、1)テント生活で再構築の始まった地域コミュニティが、仮設住宅期に最も成熟し自治が形成されるものの、その後仮設住宅から恒久住宅への移行期において衰退に向かうこと、2)仮設住宅の施設や空間的な配置が、コミュニティ形成やそこに住む人々の生活(対応力)に様々な形で影響を与え、住環境を良好に維持する上で重要な要素であったことが明らかになった。