都市計画論文集
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美術館を対象とした市民の便益評価
倉敷市大原美術館を事例に
垣内 恵美子奥山 忠裕寺田 鮎美
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2009 年 44.3 巻 p. 403-408

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抄録
社会的便益を過小評価されがちな美術館活動について、その受益者及び社会的便益をある程度客観的に推計することにより、その社会的便益にふさわしい適切な支援のあり方を検討することを目的として、岡山県倉敷市にある大原美術館を事例として取り上げ、CVM(仮想評価法)を用いた市民調査を実施した。結果として、大原美術館が、近隣地域(倉敷市及び岡山市)の市民に与える総便益は年間約6億円と推計され、将来世代のためといった遺贈価値、他の人が利用しているからといった代位価値、誇りに思うといった威信価値、都市の魅力を高めるなどの非利用価値が大きいことがわかった。また、WTP(支払意志額)に影響する変数は、大学院レベルの学歴及び所得、大原美術館への総訪問回数となった。また半数を超える市民が支払意志を有することから地方自治体による一定程度の支援は正当性を有すると考えられるが、同時に、相対的に高いWTPを有する一部の市民が存在することから、別途これらの人々の支援を得るスキームを考えることも必要であろう。
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© 2009 公益社団法人 日本都市計画学会
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