抄録
密集市街地における老朽住宅の建て替えが進まない背景の一つとして、建築基準法集団規定の接道要件、道路斜線制限、建ぺい率等の影響が指摘されている。一部の地方公共団体では、建築基準法集団規定の特例制度の活用等、街区レベルの規制誘導手法を併用することにより、建て替えの誘導・促進に努めているが、活用事例がなかなか増えていかない状況にある。本研究では、街並み誘導型地区計画(に基づく認定)、建ぺい率特例許可、三項道路(水平距離の指定)、連担建築物設計制度、43条但し書き許可の5つの手法を取り上げ、47都道府県および密集市街地を抱える全国275市区町村の建築指導部局と密集市街地整備部局に対し、これら5手法の活用意向や適用に当たっての課題等についてアンケート調査を行った。その結果、三項道路と建ぺい率特例許可の活用意向が低いことが明らかとなった。これら2つの手法は、基準切り下げの性格が強いため、一層合理的な根拠が要求される運用基準の策定が難しく、そのことが密集市街地の再生産に対する懸念や、従前との建築行政の一貫性や他地区との公平性の説明の困難さにつながっているのではないかと推察された。