抄録
本稿は、東京都戦災復興区画整理事業を対象に、東京都区画整理課保管資料『東京都都市計画復興土地区画整理事業地区事業計画書』を用いて、事業認可段階までの街区計画・設計の到達点と、実現しようとしていた市街地像の実態を明らかにすることを目的とし、以下の点を明らかにした。1.区画整理事業に先駆けて発表された帝都復興改造案要旨の用途地域特別地区の内容は区画整理内の市街化計画に引き継がれ、そこから柔軟且つ多様な計画立案が行われた。2.市街化計画は、従前の地域特性を読み込み、緻密な街区計画であった。そして、区画整理事業は、単なる土地整理にとどまらず、都市施設配置といった上物の計画を含む総合的な都市計画として計画された。3.設計標準の枠組みを越えた東京都独自と見られる計画立案は、主に計画初期段階に行われた地区で顕著である。4.施行時期による計画内容の違いは、当時事業に従事していた技師の異動等による影響と考えられる。