抄録
途上国を中心に急速な都市化に伴う都市スラム問題は深刻化し続けており、効果的かつ持続的な改善事業計画が国内外で求められている。本研究はタイ王国の首都バンコクの都市スラムコミュニティを対象とし、住環境改善活動がもたらす住民組織の特徴とその変遷を明らかにすることを目的としたものである。ケーススタディとアンケート調査の総合的な分析結果として、対象地域における住民組織が地縁性に基づく自助的関係を基盤とした組織化を主流としてきた一方、近年の事業における実質業務の高度化によって住民組織内関係の官僚化と住民リーダーのための人材の限定化が進み、結果、問題意識格差による住民参加の低下傾向が明らかとなった。今後、自助的関係を維持するための行政機関、NGO、住民組織ネットワークの協働による補完・監視機能制度を中心としたしくみづくりの必要性が示唆された。