都市計画論文集
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ルイ・ボニエによる用語「ピトレスク」の使用についての文献研究
1916年から1920年の古きパリ委員会議事録を対象として
江口 久美
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2013 年 48 巻 3 号 p. 231-236

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抄録

本研究は、用語「ピトレスク」の黎明期である20世紀初頭に時期に絞り、「ピトレスク」の概念を系統立て、分析することを目的とする。具体的には、用語「ピトレスク」の建築家ルイ・ボニエによる用語の使用事例を収集し、その内容に着目し、系統を整理・分析することで、「ピトレスク」の概念の一端を明らかにする。結果として、20世紀初頭のパリにおける用語「ピトレスク」の概念は、イギリスで18世紀に形成されたピクチャレスク美学の自然の概念を継承しつつも、都市景観へのまなざしとして新たな価値を紡ぎだしたことが分かった。まず、対象が自然ではなく都市に向いたことがあげられる。そのスケールは、建造物の一部分から街路までと幅広い。また、概念の性質は「多様性・構成・懐古性・自然・地方性・特異性」であったことが分かった。また、「ピトレスク」な「様相」といった、具体的な景観ではなく曖昧模糊とした対象を指す用法も発見できた。同時に使用された形容詞から見た概念では、前述のものに加えて更に負の側面の強い「吐き気を催させる」や、今まで見られなかった「力強い」という側面も明らかになった。

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© 2013 公益社団法人 日本都市計画学会
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