都市計画論文集
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東日本大震災における学校施設の津波避難行動に関する調査研究
岩手県沿岸小中学校を対象として
菊池 義浩南 正昭
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2014 年 49 巻 3 号 p. 333-338

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抄録

東日本大震災では学校施設も大きな被害を受け、教育現場の防災対策強化が求められている。本研究は、今次震災における津波避難行動の実態を明らかにし、特徴的な事例の分析結果を踏まえ、空間計画の視点から今後の避難対策を検討した。岩手県沿岸部の小中学校を対象として、現地での詳細なインタビュー調査および現地踏査を実施し、次のような結果を得ることができた。1)想定を大きく超える津波により、津波浸水予測の範囲に含まれていなかった学校も多数被災しており、半数の学校で急遽当日の避難先を変更している。2)各校における避難行動は多様で、一斉的・個別的な避難が行われたケース、避難場所・避難所として避難者を受け入れていたケース、緊急避難先を変更して集団避難したケース、滞在避難に苦慮したケースなどがみられた。3)この先の避難対策としては、緊急避難先は分散避難になることも想定して設ける、滞在避難先は短期的および長期的に滞在する施設を階層的に配置しておく、避難所利用は発災後の時間経緯に応じて段階的に検討するなどが考えられる。今回の被災経験に基づく調査データの分析的な考察から、津波防災に対する有用な知見を得ることができた。

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© 2014 公益社団法人 日本都市計画学会
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