抄録
本研究の目的はスペイン地中海沿岸の中都市バレンシアにおける用水路と都市構造の変容の関係を明らかにすることである。下水用水路と灌漑用水路を一体的に捉えた水の流れとみなすことで、時代ごとに用水路が影響を及ぼしてきた都市構造の総体として現在のバレンシア市街地を把握することができた。主な結論を以下に示す。1)現在の旧市街地とその周辺はイスラム占領時代以降に開削された下水用水路網と強い関係がある。2)イスラム占領時代に起源をもち、現在は市街地に吸収されてしまっている都市周辺部の集落はいずれも用水路本流付近に位置している。3)下水用水路と灌漑用水路を繋げることで創られた汚染された農地と19世紀中頃の市街地拡張計画には密接な関係性がある。4)新しい市民菜園が既存の用水路付近に現れ始めている。