2015 年 50 巻 1 号 p. 81-88
サンフランシスコ市では、初期の段階から福祉局と公衆衛生局の連携によるホームレス支援体制が形成されており、公衆衛生局が公的に支持するハームリダクションは、ホームレス支援の理念として根付いてきた。一方で、近年みられる連邦政府によるホームレス支援の成果重視や都市部にみられる貧困地域の高級化は、同市のハームリダクションを理念としたホームレス政策と対立し得るものである。本研究では、サンフランシスコ市のホームレス支援において、複雑な阻害要因を持つホームレスを支援に包摂しようとするハームリダクションの理念と、数値的成果が期待されるハウジングファーストを推進する連邦政府の成果重視の方針が、現場でいかに共存又は対立しているかについて論じるとともに、貧困地域の高級化という文脈から、ホームレス支援におけるハームリダクション理念の意義を明らかにした。