本研究は、東日本大震災によって原発複合災害を経験した福島県南相馬市小高区において、震災前に第二次・第三次産業を営んでいた事業所のうち、相双地域で事業を再開している方々を対象とした聞取り調査をもとに、生業再生への示唆を得ることを目的とした研究である。結果として、復興事業や除染作業が進行中である状況下において、7つの諸要素((1)場所、(2)設備、(3)材料、(4)技術、(5)人、(6)需要、(7)事業者間ネットワーク)がいかに事業再開に寄与したか、あるいは、支障となっていたのかを明らかにしている。また、個々の事業所の実態把握を通じて、避難指示解除準備時期における地域の生業がいかなる状況にあるのかを類型化すると、1)震災後の特殊な需要に対応している、2)事業主の意思によって再開するか否か、いつ再開するかを比較的自由に決めている、3)事業主の意思によらず、震災前からの社会的環境から再開を決めている、といった3つの場合があることが分かった。