2017 年 52 巻 3 号 p. 1256-1261
民有地緑化の誘導は、これまで主に緑化率のような定量的緑化基準によって行われてきた。しかし、定量的緑化基準だけでは緑量は確保できても、市民が利用するのに快適とは言い難い空地を生み出す可能性がある。このような問題に対し、東京都は個別事業毎に協議によって緑空間の質を柔軟に検討する協議調整プロセス(以下「みどりの計画書協議」)を導入し、先進的な取り組みを行っている。そこで本研究では、協議の内容と運用実態を分析することにより、民有地緑化誘導におけるみどりの計画書協議の有用性や課題を考察することを目的とした。東京都・事業者へのヒアリング、具体事例3件の分析を通じて、当協議の意義として定量的緑化誘導基準では不足する空間の質的向上への寄与が確認できた。また、その誘導の根拠、誘導の幅、誘導後のモニタリングといった部分での課題も把握することができた。今後は市民や学識者・専門家など幅広いステークホルダーの関与や完了後のモニタリング体制の検討を行っていく必要があるといえる。