本研究の目的は、観光地化の進む漁村集落の伊根浦集落を対象に、観光業への転用及びIターン者への引き継ぎを前提とした漁業資産のマネジメントに資する知見を得ることである。本研究では以下の3点が明らかになった。1)観光業に関連した漁業資産の転用事例として、宿泊業、飲食業、海上タクシー業、釣り船業、釣り体験業が確認された。2)舟屋、船、技術それぞれにIターン者が引き継ぐ際の障壁が存在することが明らかになった。3)集落内の人間の仲介、名義貸し、漁業会社への勤務との併行、及び地域貢献の蓄積による信頼獲得によって障壁に対応し、Iターン者が漁業資産を引き継ぐ事例が確認された。以上より、漁業資源のマネジメントにおいて、地区単位の体制構築及び漁業者と観光業者との合意形成が重要であることを示した。