抄録
本研究では、東日本大震災において多様な運用がなされた初動期建築規制の指定実態を整理するとともに、その空間形成に与えた影響を明らかにすることを通じて、大災害後の建築規制の有用な設計制度・運用に対して示唆を与えることを目的としている。宮城県下の7市町において、震災直後から復興事業の障害を防止する目的で84 条制限等の区域が指定された。指定パターンで分類すると、「被災区域型」「制度型」「被災区域+制度型」「事業型」の4つに分けられる。初動期建築規制は、本来的な目的である面的整備事業の障害防止だけではなく、災害危険区域の指定前の建築抑制にも活用され、効果的であった。しかし、現在のような都市計画事業の可否による区域選択では、都市計画区域外の集落部における復興事業とそれらに繋がる災害危険区域の指定へとつなげるための建築規制として機能できず、実際に既存不適格建築も見られた。初動期建築規制を都市計画事業に限定せずに、災害危険区域の指定を含めた、全体的な空間復興へとつなげるための制度にすることの必要性が示唆される。