本論は、イタリアのウルバーニ法典に基づく新しい景観計画の策定に際し、国土景観を保護する観点から、国(文化省と文化財監督局)の果たす役割を明らかにしている。具体的に、1)国が景観保護すべきエリアの特定(6210エリア)、2)国による直接的な景観コントロール体制の構築、3)国土スケールの景観情報の周知システム、4)国の国際的で継続的な景観制作立案体制の構築、といった日本に欠けている国の役割を明らかにした。 また、2018年現在で、景観保護規制エリアの特定を行う国との「共同計画」を含めて、景観計画のすべての手続きを終えた州政府は、トスカーナ州、プーリア州、ピエモンテ州、フリウリ・ヴェネツィア・ジュリア州の4州であることを明らかにした。さらに、国が景観保護規制エリアの景観許認可制度と環境アセスメント制度の二つの手段を用いていること、WEBで公開される景観環境広域情報システム、文化財のハザードマップ広域情報システム等を統合し、景観と文化財と防災のシステムを統合したこと、「国の景観クオリティ観察センター」により、イタリア景観憲章の制定を定め、国際的な景観政策に連動した取り組みが見られる、といった日本で学ぶべき示唆をまとめた。