抄録
本研究では,動画作成を通して,利害関係者が情報共有・意見反映することができる合意形成手法として,PDCAサイクルを繰り返して,段階的に道路空間の将来像を3DVRで描き出し,動画を作成するという合意形成手法を提案した.また,3DVR作成における関係者の協議への影響を,交渉学を用いて考察した.その結果,3DVR活用により利害関係者の立場の把握,BATNAの把握ができることを明らかにした.そして,より利害関係者が満足するような合意にむけて,利害関係者の意見が互いに寄り合ってくることを描き出した.一方で,道路空間将来像の合意形成の場面において,3DVR・動画作成の留意点がある.短編動画の留意点として,動画構成に制約があり,演出による利害関係者への配慮を示すことが難しいこと,印象が重要になる点が挙げられる.長編動画の留意点として,動画公開によるイメージ先行への懸念,専門用語の理解に関する懸念や,道路空間再配分によって不都合を被る人や未可視化地域の人への配慮などが挙げられる.