都市計画論文集
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岐阜都市計画下水道事業の成立経緯に関する研究
出村 嘉史
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2018 年 53 巻 3 号 p. 297-304

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抄録

本研究は、日本で初めて全面的な分流式下水道を実現した市である岐阜市を対象に、建設されるまでの過程を追い複雑に絡み合う諸般の事情を整理して、都市計画下水道事業の計画の実態を明らかにし、その計画のパースペクティブを把握し、それがどのような立場と体制によって形成されてきたものであるのかを明らかにすることを目的とする。全国で下水道事業が発展段階にあった昭和初期に、岐阜市長松尾國松と技師安部源三郎は下流を含めた広い地域的な水収支を視野にいれた技術的な解を、既存の排水計画の徹底した研究と現状の測量を実施しながら見出していった。鍵は市内を通過して下流の広大な耕地を灌漑する忠節用水の改良事業であり、県と国によって進められたこの計画内容を共有しながらこれを含めて初めて実現する分流式下水道計画を同時に進め、全国においても最先端のシステムを実現させた。この下水道建設事業は、都市計画事業の枠を用いているものの、実態は高い技術の導入に導かれた基盤整備事業であった。しかし、その事業が持ち得た視野は、極めて地方計画的なものであったことが指摘できる。

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© 2018 公益社団法人 日本都市計画学会
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