抄録
オーストラリアには、ホームレス(以下HL)施策の中に位置づけられるユースHL支援という政策が存在し、様々な理由から家庭内に居場所を無くし、友人宅を転々としたり、家出状態にあるなどの、不安定な居住状態にある若者や子どもたちを対象とした支援が行われている。こうした支援施策はコミュニティ発意の若者の居住支援が1970年代末から制度として確立されてきた経緯を持ち、現在も非政府のユースHL支援団体が支援提供を担っている。そこで本研究は、オーストラリア、ニューサウスウェールズ州における支援団体の活動実態と文献調査から、ユースHL支援のシステムと実態を把握することを第一の目的とする。さらにユースHL支援における地域内での支援活動を把握し、さらに地域とのつながりに関する支援者の意識を明らかにする事を第二の目的とする。結論として、(1)オーストラリアでは不安定な居住状態にある若者や子供たちをユースHLとして捉えることでこの問題を同定し、HL支援施策の中に位置づけられるユースHL支援を確立したこと(2)ユースHL支援は各地の非政府の支援団体によって提供されており、支援の上では地域コミュニティとのつながりが重視されていることを明らかにした。