抄録
本研究は、天津・五大道歴史文化街区を対象として、コンバージョン店舗の誘発策が導入された歴史的市街地における持続可能な保全および活性化を目指す上での課題を明らかにすることを目的とする。自治体担当者へのヒアリングおよび店主へのアンケート調査の結果を分析することにより、コンバージョン店舗の誘発効果および用途指針の運用効果を把握した。修景事業実施前後でコンバージョン店舗数は増加し、政府による拠点再開発事業や観光事業をはじめとするソフト施策による効果も確認できた。業種に関しても、用途指針に定められたカフェをはじめとする業種の出店は誘発されているが、飲食業が増加し業種の均一化も進んでいる。一方で、用途指針に沿わない業種の店舗の出店も増加しており、その理由としては出店許可制度の不備などが確認できた。地域の歴史的特性を踏まえた店舗出店の支援と規制を併用する方策の必要性が示唆された。