都市計画論文集
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公共交通運賃の空間構造と公共交通優位地域の空間的評価
榎本 俊祐嚴 先鏞鈴木 勉
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2020 年 55 巻 3 号 p. 1227-1232

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抄録

本研究は,全国的な規模で日本の公共交通運賃の具体的水準とその空間構造を明らかにするとともに,距離当たりの運賃の地域差と自動車利用時費用との対比という2つの側面から運賃水準を比較することにより,公共交通が有利となる地域とその空間的特徴を明らかにし,公共交通の利用促進のための運賃設計に資する知見を得ることを目的とする.全国の40km圏内の市区町村間移動の所要時間と運賃の計算に基づき,自動車利用時費用との競合性を考慮し全国の公共交通分担率を推定した.その結果,20~30円/kmという日本の共通した交通にかける費用水準があるが,地域により運賃水準に違いが存在し,遠距離の移動のほどその差が大きくなることがわかった.東京・大阪京阪神都市圏パーソントリップ調査に基づいた公共交通分担率の推定から公共交通分担率は時間・運賃の減少に伴い増加することが示された.その結果に基づき,全国の自治体における運賃の変化による分担率の変化を調べた結果,運賃低減政策は主要都市圏辺縁部において,統一運賃政策では地方部の一部において公共交通の分担率を向上させることのできる地域が存在することが示唆された.

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