2021 年 56 巻 1 号 p. 189-200
本研究は、特定の区域における最寄り品アクセス環境の把握において、特定の距離圏を徒歩圏として想定する従来の手法に不足する視点を考慮することで、より精緻な把握が可能となることを示している。本研究で提案する「包含率線」は、個々人の移動能力を考慮に入れた任意の距離圏とこれに含まれる区域内人口割合の関係を図示したもので、居住者ごとの移動可能距離の差異を考慮に入れた分析が可能となる。区域内の最寄り品アクセス環境は、「包含率線」全体のふるまいで把握できるが、市街化区域・ DID ・立地適正化計画の誘導区域の三区域の差異もそれぞれの「包含率線」を比較により明らかにできる。また、同一地区における高齢者・非高齢者の「包含率線」は一致し、高齢化率の高い地区は偏在する一方で、全体的には高齢・非高齢者は同程度に包含されていた。そして、既存手法の有効性も一定程度確認された。