我が国では、災害危険区域など、土砂災害リスクの高い地域での居住を制限する仕組みが整備されているが、実際には居住制限には憲法で保障された財産権に関わる面があり、各自治体は崩壊防止施設を公的に整備することなどによって、土砂災害リスクの高い地域における住宅建築を認めてきた。本論文では、全国市町村の中で急傾斜地崩壊を理由とする災害危険区域の面積が最も広い横須賀市において、崩壊防止施設の選択と集中の必要性や、立地適正計画における居住誘導区域に関する課題を抽出した。そして市内2つの地域のケーススタディを通して、崩壊防止施設維持の集中化及び崩壊防止施設新設の抑制を、ゾーニングの手法で、土砂災害リスク軽減と併せて行うことで、財産権の問題に対処し、且つ駅周辺でありながら居住誘導区域から外れている地域の再生や、駅から離れた居住誘導区域の持続性確保を進める可能性を検討した。