都市計画論文集
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58 巻, 2 号
都市計画論文集
選択された号の論文の12件中1~12を表示しています
  • 神奈川県鎌倉市を対象として
    福島 渓太, 薄井 宏行, 浅見 泰司, 貞広 幸雄
    原稿種別: 研究論文
    2023 年 58 巻 2 号 p. 143-152
    発行日: 2023/10/25
    公開日: 2023/10/25
    ジャーナル オープンアクセス

    本論文は観光都市へのシェアサイクル導入が観光客の回遊行動に与える影響を、立ち寄り施設数と滞在時間の観点から定量的に検証することを目的とする。交通手段選択確率、立ち寄り発生確率、立ち寄り施設選択確率からなる回遊観光モデルを構築し、複数の交通手段を使いうる観光客の回遊行動を記述し、鎌倉市を対象地としてマルコフ連鎖モンテカルロシミュレーションを行った。シミュレーションの結果、徒歩、シェアサイクル、公共交通機関を交通手段選択肢に持つ観光客は、シェアサイクルを交通手段選択肢に持たない観光客と同程度の滞在時間を維持しつつ、より多くの施設に立ち寄る傾向にあることが明らかとなった。更にシェアサイクルの導入が潜在的な観光資源の発掘に寄与することも示唆された。本論文はシェアサイクル導入を検討する観光都市が、導入の効果を検証する上で有用である。

  • 上杉 昌也, 上村 要司, 矢野 桂司
    原稿種別: 研究論文
    2023 年 58 巻 2 号 p. 153-160
    発行日: 2023/10/25
    公開日: 2023/10/25
    ジャーナル オープンアクセス

    人口減少期にある日本では,大都市圏においても急速な高齢化や転出に伴う空き家・空き地の増大が予想される.本研究では,人口動態の異なる東京・大阪・広島・福岡の4つの都市圏を対象に,空き家予防の観点から,将来(2030年)の空き家の立地状況について推計し,その空間構造を小地域単位かつ都市圏規模で明らかにした.特に,ミクロな空間スケールでの地理的および社会人口学的特性が把握できるジオデモグラフィクスを活用することで,都市圏内部の多様性や都市圏間の特徴の違いが定量的に示された.地区特性によって空き家化の進行の度合いや要因は異なることから,空き家問題に携わる自治体や民間事業者等においては,将来的に空き家対策に取り組むべき優先地域を特定し,地区レベルの特性に応じた空き家予防策を展開してくことが求められる.

  • ゴードン W・プランゲ文庫所蔵観光関連新聞における掲載記事の分析
    菊地 淑人
    原稿種別: 研究論文
    2023 年 58 巻 2 号 p. 161-168
    発行日: 2023/10/25
    公開日: 2023/10/25
    ジャーナル オープンアクセス

    本稿では、ゴードン W・プランゲ文庫所蔵の終戦直後に各地で発行された観光関連新聞を対象に、これらに掲載された自然公園に関する記事の網羅的な収集とその検討から、国立公園を中心とする自然公園の指定や観光開発等をめぐる地域レベルの動向とその展開について明らかにすることを目的とする。戦後直後、国立公園指定推進運動は全国に広がり、指定推進のために多くの団体も設立された。こうした取組みに多くの観光関連団体も参加していたことは注目され、国立公園の指定に関する地元の期待は戦前と同様に高く、特に観光面での強い期待があったことが指摘できる。

  • 神奈川県横須賀市でのケーススタディ
    吉武 俊一郎
    原稿種別: 研究論文
    2023 年 58 巻 2 号 p. 169-176
    発行日: 2023/10/25
    公開日: 2023/10/25
    ジャーナル オープンアクセス

    我が国では、災害危険区域など、土砂災害リスクの高い地域での居住を制限する仕組みが整備されているが、実際には居住制限には憲法で保障された財産権に関わる面があり、各自治体は崩壊防止施設を公的に整備することなどによって、土砂災害リスクの高い地域における住宅建築を認めてきた。本論文では、全国市町村の中で急傾斜地崩壊を理由とする災害危険区域の面積が最も広い横須賀市において、崩壊防止施設の選択と集中の必要性や、立地適正計画における居住誘導区域に関する課題を抽出した。そして市内2つの地域のケーススタディを通して、崩壊防止施設維持の集中化及び崩壊防止施設新設の抑制を、ゾーニングの手法で、土砂災害リスク軽減と併せて行うことで、財産権の問題に対処し、且つ駅周辺でありながら居住誘導区域から外れている地域の再生や、駅から離れた居住誘導区域の持続性確保を進める可能性を検討した。

  • 愛知県豊田市を事例に
    佐藤 雄哉, 坪井 志朗
    原稿種別: 研究論文
    2023 年 58 巻 2 号 p. 177-186
    発行日: 2023/10/25
    公開日: 2023/10/25
    ジャーナル オープンアクセス

    本研究は、市民の居住地選択意向のCOVID-19に起因する変化を検討している。その上で、本研究では立地適正化計画の誘導区域と市民の居住地選択意向の変化の関係性を考察している。本研究では以下のことが明らかになった。豊田市に居住する住民のCOVID-19による居住地の変化を分析すると、COVID-19の流行前後での変化はなかった。住民に対するアンケート調査でもCOVID-19の流行前後で住民が選ぶ居住したいエリアに変化はなかった。また、居住地を選択する理由にも変化はなかった。

  • 三浦 詩乃, 宋 俊煥, 石塚 高秋
    原稿種別: 研究論文
    2023 年 58 巻 2 号 p. 187-202
    発行日: 2023/10/25
    公開日: 2023/10/25
    ジャーナル オープンアクセス

    本研究は、歩道の利用シーンを観測した映像に対する画像処理および機械学習から取得可能な、歩行者のプレイス需要に関する指標を提案し、それらの妥当性を検証することで、プレイス顕在需要の観点をふまえた歩道の評価のための、指標構築に向けた課題を提示することを目的とした。結論として、(1)プレイス顕在需要の計測指標としての滞留密度の有用性、(2)指標の利用目的に応じた滞留判定時間の設定の重要性、(3)地点別のプレイス顕在需要に対する性能評価において、長期滞留者数および滞留位置と滞留前後の軌跡の分類を用いうる可能性(2-4類型)、(4)プレイス顕在需要には紐づかないが、沿道への立ち寄り人数、断面通行平均速度について、地点別に通行需要との関係性が異なる傾向があり、空間の特徴の比較に有用である可能性、の4点を明らかにした。

  • 東京都八王子市での介護予防・日常生活支援総合事業を対象として
    山口 行介, 饗庭 伸
    原稿種別: 研究論文
    2023 年 58 巻 2 号 p. 203-211
    発行日: 2023/10/25
    公開日: 2023/10/25
    ジャーナル オープンアクセス

    本研究は高齢化が顕著となる大都市圏郊外部を対象に、民間事業者が提供主体となり市内一円に提供される訪問介護と住民が提供主体となる訪問型住民主体サービスとが重層的に展開される都市空間についての実態を明らかにした。本研究で得られた知見は2点あり、都市空間との関係では、訪問型住民主体サービスは介護が地域住民の中で共通の課題として昇華されやすい75歳以上人口率の高い住宅団地や市街地の辺縁部で多く展開されており、これらの地域で自立度が低下してからの暮らしを支える共助の仕組みとして機能し、訪問介護と訪問型住民主体サービスとが重層的に展開される。サービスの内容では、訪問型住民主体サービスは特に住宅団地をサービス提供圏とするもので、見守りといった介護保険外サービスや、当該住宅団地の住環境を反映してのゴミ出しや外出付き添いが行われ、訪問介護による介護保険サービスに加え、訪問型住民主体サービスにより住宅団地での継続居住に必要な介護保険外サービスが重層的に提供されている。

  • 谷本 圭志, 岡田 雄太
    原稿種別: 研究論文
    2023 年 58 巻 2 号 p. 212-218
    発行日: 2023/10/25
    公開日: 2023/10/25
    ジャーナル オープンアクセス

    気候変動の影響により,極端に多い降雪が局地的に生じることが予測されている.また,除雪作業を担う建設業の人手不足の進行で,地方自治体が十分な除雪ができない事態に直面する.そこで,地方自治体が小型除雪機を町内会に貸し出し,除雪の役割を分担することが重要となる.その際には,どのような条件の町内会に何台の小型除雪機を割り当てるかを示した基準が必要になる.そこで本研究では,基準を作成するための数理モデルを混合整数計画法に基づいて構築する.また,鳥取市内の町内会を対象として,クリギングを用いて降雪量を推定した上で実証的に基準を導出する.

  • 奥山 博人, 浅野 純一郎
    原稿種別: 研究論文
    2023 年 58 巻 2 号 p. 219-230
    発行日: 2023/10/25
    公開日: 2023/10/25
    ジャーナル オープンアクセス

    第二次国土形成計画(全国計画)の下、居住誘導区域外においてもコンパクト・プラス・ネットワーク型コンパクトシティの推進が重要となっている。特に、開発許可制度によって開発規制が厳しい市街化調整区域では拠点設定のあり方が難しい課題である。そこで本研究では全国の地方都市を対象に、調整区域における拠点設定(都市マスタープランによる拠点)とその実現手段の実態を明らかにすることを目的とする。アンケート調査より得た全国の地方線引き都市における拠点設定データを基に以下の各点を明らかにした。①全国の線引き地方都市で調整区域に拠点設定を行うのは、約4割の自治体に留まる。②調整区域の自治や生活基盤を支える拠点は地域型と集落型の2層で概ね把握できる、③両拠点の設定都市は調整区域人口率が高い都市に多く、人口率が高いほど拠点数も増える。④拠点設定のパターンとしては、同条件全部設定が主である。⑤拠点の実現手段については、地域型では約6割の都市で実績がないのに対し、集落型では に6割の都市で実績があり、集落型が先行している。

  • 空間の開き方、利用者への働きかけ及びCOVID-19の影響に着目して
    田中 由乃
    原稿種別: 研究論文
    2023 年 58 巻 2 号 p. 231-240
    発行日: 2023/10/25
    公開日: 2023/10/25
    ジャーナル オープンアクセス

    本研究は、シェアハウスとシェアオフィスが一体となった施設を対象に事例調査を行い、共用空間の管理運営体制について、空間の開き方、利用者への働きかけ、及びCOVID-19の影響の観点から明らかにすることを目的とする。調査の結果、空間の開き方には以下の3つのパターンがあることが分かった。①シェアハウスの内部にシェアオフィス利用者も利用可能な共用空間を設けるパターン、②シェアオフィスにシェアハウス住民も利用可能な共用空間を設けるパターン、③シェアハウス内にもシェアオフィス内にも属さないところに共用空間を設けるパターン、である。また、運営者による積極的な利用者への働きかけは利用者間の交流に効果的であったが、COVID-19の流行によって制限された状況が明らかになった。

  • 川井 千敬, 阿部 大輔
    原稿種別: 研究論文
    2023 年 58 巻 2 号 p. 241-249
    発行日: 2023/10/25
    公開日: 2023/10/25
    ジャーナル オープンアクセス

    本稿では旅館業法に基づく簡易宿所を対象に、その政策的対応及び位置付けの変化をたどりながら、1)立地傾向と、2)地価との関係性についての検討からオーバーツーリズム期の影響を考察することを目的とする。調査結果から、1)簡易宿所は2016年以降、商業機能や観光機能が集積するエリアではなく、住宅用途の優勢なエリアに立地するようになってきたこと、2)旅館・ホテルに比べ地価の低いエリアに立地すること、またそれは簡易宿所の集積する中心市街地においても同様であること、3)1)、2)を踏まえて、近年立地特性が変容した簡易宿所と地価形成の関係を分析すると、特に2017年、2018年の簡易宿所が急増しつづけた時期は簡易宿所による地価上昇の影響が大きいことが明らかになった。

  • "Réinventons Nos Places (2015-) " における計画協議の分析を通じて
    諏訪 淑也, 山口 敬太
    原稿種別: 論説・報告
    2023 年 58 巻 2 号 p. 250-265
    発行日: 2023/10/25
    公開日: 2023/10/25
    ジャーナル オープンアクセス

    本論文は2015-2016年からパリで計画協議が進められた"Reinventons nos places"(私たちの広場の再発明)プロジェクトによる7つの広場の再編計画を取り上げ、その計画の特徴と計画協議のあり方を明らかにするものである。本広場整備の特徴として、1)車道の削減などによる歩行者空間の拡大、2)移動・横断の円滑化、3)異なる交通手段の共存、4)滞留空間の向上、5)歴史性・シンボル性の向上、が共通の方針として掲げられたことを示した上で、その具体的な内容について明らかにした。また代表例の計画協議内容の分析を通じて、パリ市当局による空間的な課題認識や整備により得られる効果の評価、住民意見の反映の方法とその内容、計画・整備における優先順位づけの具体的内容を明らかにした。

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