抄録
日本の幹線道路網は、その形成過程からして、(1) 古代の七道駅路時代、(2) 江戸期の五街道時代、(3) 明治期の国道時代 (4) 昭和後期の高速道路時代、の4期に区分することができる。古代の七道駅路は、平城京および平安京を中心とし、放射状に全国に伸びる道路網体系であり、江戸期の五街道を中心とする諸街道は、江戸を中心とする放射幹線道路を軸に形成されている。明治期以降の国道網は、概ね街道網を踏襲しているが、統一国家としての面的形成に留意されている。自動車の発達に即応した高速道路網は、従来の国道網とは異なった新たな観点から網形成が行なわれているが、東京と大阪の二つの中心を持つ複心的な網構成にその特色がある。
これらの各時代の幹線道路網のうち特徴的なことは、高速道路網が古代回帰ともいうべき様相を示し、七道駅路と延長、網構成、路線位置、駅 (インターチェンジ) 配置等において、顕著な一致性を見せていることである。延長については、高速道路計画の7.600kmのうち、北海道を除くと6, 500kmとなるが、七道駅路総延長6, 500kmとほとんど等しい。また路線のマクロ的な配置構成が近畿地域および九州地域において特徴的である。幾つかの地域において、高速道路の路線は近世の街道や近代の国道より山寄りとなって、古代路に近い場合がかなりある。また高速道路のインターチェンジと古代路の駅の間隔と位置はよく一致した例が各所に見られ、名称も同一なのが少なからずある。