日本土木史研究発表会論文集
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辰巳用水の施工環境
青木 治夫
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1988 年 8 巻 p. 40-46

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抄録

辰巳用水は近世初期に造られた加賀藩の城中用水である。この用水の歴史的背景は、今日、多くの推論を加えながら一応成立している。その工事を総括した人は、建設直後に書かれた後藤家 (十村役) の覚書に「小松町人板屋兵四郎工ニ依テ也」とある。ところが、18世紀初めになって、加賀藩成立からの記述が数多くなされるようになり、その辰巳用水の記事には覚書と同様、小松町人板屋兵四郎とするものと、能州小代官下村兵四郎・加州小松町人板屋兵四郎の二人とするものがあらわれた。今日、下村兵四郎と板屋兵四郎とは同一人物であり、板屋兵四郎が用水建設を総括したと考える人が多くなっている。しかし、当時の先端技術を多く用いた辰巳用水に対応し得る兵四郎の技術経歴が述べられていないし、工事施工についても殆どふれていない。そこで、我が国の近世初期の鉱山や隧道のある同種工事の事例から、指導体制や施工法を調べて、辰巳用水の場合を推論した。

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