日本土木史研究発表会論文集
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関西地方における寺社参詣鉄道の成立と発展について
天野 光三前田 泰敬二十軒 起夫
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キーワード: 観光, 寺社, 鉄道史
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1988 年 8 巻 p. 88-95

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抄録

関西地方には、古来よりの伝統と格式を持ち、多くの参詣客で賑わう寺社・仏閣が数多く存在している。これらの寺社への参詣客輸送を主な目的として、明治から昭和初期にかけて多くの地方鉄道・軌道や軽便鉄道が設けられた。
関西鉄道 (現JR関西線) に接続して、伊勢神宮と結ぶ「参宮鉄道」(現JR参宮線) が、明治26年に開業したのを始めとして、明治31年には高野山と大阪を結ぶ高野鉄道 (現南海高野線) が開業した。その後、能勢電車、水間鉄道、天理軽便鉄道 (現近鉄天理線)、生駒ケーブル、参宮急行電鉄 (現近鉄大阪線・山川線) など数多くの路線が次々と生まれた。これらの鉄道の中には、第二次大戦末期に不要不急路線として資材供出の犠牲となったものも少なくない。このような寺社参詣鉄道は、安定した寺社参詣旅客の輸送需要に支えられて発展していき、大軌 (現近鉄) 系のように次々と路線の拡大をはかっていった会社も見られる。
しかし、戦後、昭和30年代に入り、観光ニーズの多様化や、急速なモータリゼイションなどにより乗客の大幅な減少が引き起され、経営基盤が揺り動かされている鉄道路線も少なくない、また一方では、能勢電鉄や水間鉄道などのように、都市化の波に洗われ、通勤通学輸送を主体とした都市近郊鉄道に脱皮しつつある路線も出てきている。これらの鉄道について路線の成立と発展過程をふりかえり、大阪都市圏の鉄道綱整備に果たした役割について、その意義を考察するものである。

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