日本土木史研究発表会論文集
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富山県下新川海岸における侵食と海岸構造物築造の変遷
芝野 照夫土屋 義人須山 洋
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1989 年 9 巻 p. 263-270

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抄録

富山県東部に位置する下新川海岸は、日本でも有数の海岸侵食の激しいところである。この海岸は黒部川の流送土砂によって形成された扇状地海岸であって、地質時代から現在までの海水準の変動と関連して形成されてきたものである。本論文では、海岸の変形について長期的および短期的な二つのタイムスケールの観点から明らかにする。前者において扇状地形成当時の海岸線の複原と侵食および歴史時代における耕地や住宅地の決壊について述べるが、扇状地形成当時には黒部川の主流路の河口は下新川海岸の東側にあり、扇状地は拡大・発達の時期であった。しかし、主流路が現在の位置に移動すると海岸への漂砂の供給が断たれるとともに扇状地の縮小期に入り、海岸侵食が生じるようになってきた。この結果、耕地や住宅地の決壊など大きな被害を受け、この事実は口碑伝説として沿岸部に数多く伝えられている。海岸侵食に伴って、その防止対策として各種の海岸構造物が築造されてきているが、その構造物の種類と築造の変遷および海岸線の変化について明らかにしたものである。

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