抄録
土木構造物による豊かな空間創造は今後の重要な課題であるが、戦前でも奥地でのダム建設を中心にして土木構造物と風景との関わりが熱心に議論されていた。ここでは、1928 (昭和3) 年から1941 (昭和16) 年にかけて発行された「水利と土木」誌上に掲載された5つの報文に基づいて、この議論を分析した。
戦前の昭和年代に、それまで手つかずの自然が残っていた奥地に水力開発を目的にしてダムの建設が進められたので、国立公園関係者、識者から激しい反発が見られた。5つの報文は、事業者側からの発言であるが、土木構造物による風景の積極的な創造、あるいは風景との調和など対応が十分、可能であることが主張された。ここでの議論は、土木構造物と風景に関する戦後の展開を考える上で、一つの出発点になると考えている。