1998 年 18 巻 p. 245-252
直下型地震は、阪神・淡路大震災 (1995年) でその威力は十分に証明されたが、一方でその発生は極めてまれで、明治以降ではわずかに熊本地震 (1889年) があるくらいである。熊本地震は、その2年後に発生した濃尾地震のため忘れられた地震となったが、エネルギー的には中規模であったものの浅発性であったため、大地震なみの地震学的・社会学的特徴を持っていて、都市直下型地震を総合的に研究する格好の題材である。これより本論は、主として当時の新聞記者の克明な震災日記より本地震について掘り起こし、その全体像を紹介することによって、今後の地方都市の地震防災のための資料を提供しようとするものである。