抄録
本研究は、昭和7年に完成した北上川の分水堰である鴇波洗堰と脇谷洗堰の老朽化に伴う改築に際し、その遺産的価値を評価するために、その建設経緯と当時の全国的な分水堰の趨勢を調査したものである。本研究の結果、両洗堰の分流構造は上部が越流式で、下部にオリフィスという、2重構造により分流量を調節するものであり、こうした構造は近代の大型分水堰としては他に例がないことがわかった。また、その構造は当初設計で選択されたものではなく、北上川分水事業が明治44年から進展する中で度重なった設計変更による結果であることが明らかとなった。