1997 年 14 巻 p. 243-251
業務機能の再配置やワークスタイルの変化を伴いながら、東京圏の産業および地域構造は大きな変容を遂げつつある。本研究は、今後の都市交通政策における業務交通の重要性を認識し、産業・地域構造変化と業務交通特性との関係をマクロおよびミクロの両面から分析したものである。時系列のパートントリップ調査データを用いた分析により、業務核都市を中心とした郊外拠点地域において技術専門・事務および管理的職業の発生集中トリップ数の増加が顕著に見られ、昭和53年から63年までは一極化の傾向を強めていた東京圏の地域構造は、昭和63年以降、再び多極化への変容を見せていることを明らかにした。また、近年顕著な増加を示すミーティングトリップに着目し、昭和63年から平成5年にかけて郊外拠点を連絡する環状方向のトリップ数の増加が捉えられ、それが自動車トリップに支えられたものであることを示した。