1999 年 16 巻 p. 207-215
1990年代の中国における人口移動が社会全体に様々な影響をもたらしている中, 出稼ぎ労働者の送出地としての四川・徽両省を取り上げて, 農村地域における労働力移動が農業経営や農家自身にもたらしたインパクトの解明を試みた. 結論として, 農村労働力移動は現時点では, 結果的に内陸農村の経済発展に寄与しているものの, 出稼ぎ農家一非出稼ぎ農家間, あるいは同地域における先進地区-後進地区間の農家収入の格差を拡大させている. こうした収入格差がさらに拡大した場合, 出稼ぎを伴う高収入農家は将来的に農業を放棄し, 都市部への挙家型移動を行うことも予想される.