抄録
本研究は実際に顕在化した事故のみならず潜在的な事故 (ニアミス) のデータを収集し分析することにより, 近年増加傾向にある高齢者事故の減少に役立てられることを明らかにすることを目的とする. 福井県を対象地域として調査分析を行った結果, 顕在事故と潜在事故との間に関連性が認められたこと (基準連関妥当性), 運転者の意識と解読者の判定との相違点が事故分析に有効であること (構成概念妥当性) が検証された. 高齢者事故の典型ケースとして, 顕在・潜在いずれの事故データからも無信号交差点での出合頭事故が抽出された. 高齢者事故の減少には, 安全意識の向上策のみならず, 運転者がヒューマン・エラーを犯し難い交通環境の整備改善も必要である.