2001 年 18 巻 p. 25-32
北海道大学の前身にあたる札幌農学校は日本近代土木教育の黎明期から、北海道の開拓に資する土木技術者の養成を指命として教育がなされてきた。しかしその道程は安泰ではなく、明治20年代後半に文部省の方針から一旦廃止されている。著者らはその後の札幌農学校の土木教育について経緯をまとめてきたがそのなかで、北海道の鉄道関係部署と札幌農学校の結びつきの強さを認識した。
本研究では、土木教育機関の社会的な結びつきと生き残りをかけた個性化のモデルとして、札幌農学校と鉄道事業の連綿としたつながりを追う。そして特に、人事上の交流から、実務的な問題意識が形成されていった過程に着目し、今日の土木工学教育機関の戦略について考察する。