抄録
本研究は、西洋の自然支配の都市計画ではない東洋の伝統的な自然保完である裨補壓勝 (bibo-apsung) を用いた、自然と人間が調和する方法に関する研究である。裨補壓勝とは風水の対応方式である。風水の吉凶は、藏風・得水・方位および類型などを要素で判断することになるが、これらの要素、すべてをもっている吉地は少ない。そこで、風水上「凶」と判断され、居住環境の構成上不足することから補完するために用いられたのが「裨補壓勝」という技法である。裨補壓勝の方法には、山・池・森・寺・人工構造物の造営、地名の変更などがある。
本研究では、既存研究の風水説と裨補壓勝論を基にして、逆風水の地形である韓国の成安郡における地形と形局に対しての裨補、中でも地名の変更による裨補の実施の実態を確認した。その結果、風水の基本概念の論理で判断できるものを「象徴的地名裨補」、形局論で判断できるものを「形局地名裨補」として、風水地名裨補を二つに分けることができた。
「象徴的地名稗補」は、都邑の空間構造が理想的な風水都市の空間構造と異なる場合、それを改善するために行うものである。
「形局地名裨補」は、集落の中心から見える範囲に位置していることが確認できた。また、個別の集落にとって形局判断上重要な事物を個別に意味づけしている。