抄録
我が国の国内航空規制緩和政策は, 利用者利便性の観点から効果を上げているのは明らかであり, 多くの研究の対象にもなっている. しかしながら研究のほとんどが定性的に評価したものであり, 定量的に評価した研究はいくつか存在するが, 規制緩和政策全体ではなく, 個別施策の評価を対象としたものがほとんどである.
今後の航空政策を論じるに当たり, これまでの規制緩和政策の効果を定量的に把握しておくことは必要不可欠であり, 本研究では我が国の航空規制緩和政策全体を対象として, 効果や影響を定量的に分析することを目的とする.
具体的には, ネットワーク, 運賃, 航空会社の競争環境の観点から定量的に評価した. 分析の結果, 航空路線網は複数社運行化基準の緩和により, まず需要の多い東京線で, 次に大阪線へと展開していったことや, 運賃面においては, 正規運賃ベースでは, 幅運賃制度導入時に地方間の格差を是正したこと, 実効運賃では複数社運行化や運賃規制の廃止, 航空会社の新規参入がインパクトを与えたことが明らかとなった.