ペット栄養学会誌
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市販ドッグフードの脂質に対するα-トコフェロールの抗酸化効果
佐野 智恵山賀 あゆみ松本 力櫻井 英敏宮原 晃義
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2007 年 10 巻 1 号 p. 8-14

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抄録

市販ドッグフードのドライタイプ5 種類( 粗脂肪6%2種, 10%, 15%, 18%) を用いて開封直後にビタミンE(α-トコフェロール) を添加して4週間保管し, 脂質変化( 酸価, 過酸化物価, ヨウ素価)と総ビタミンEの定量を行った.1.開封直後の酸価の値は4.7~7.3を示し,イヌに対して有害な含有量ではなかった.また,5種類のドッグフードの酸価の経時変化からみて,α-トコフェロールの添加量はイヌの栄養要求量とその倍量を加えて比較した結果による抗酸化効果はほとんど差がなく,保存期間中の酸価の値ではイヌの健康には安全の範囲であった。2.過酸化物価の経時変化からみて,本実験のα-トコフェロールの添加量は,フードの過酸化物価の経時変化に影響を及ぼさなかった。3.5種類のドッグフードは時間の経過に伴ってヨウ素価が低下する傾向にあり,その値が90以下であることから, 今回のドッグフード中の脂質は不乾性油であった。 ヨウ素価はα-トコフェロールの添加量による経時変化の差はほとんどなかった。4.HPLCによる総ビタミンEの分析において,抽出時間の短縮と試薬節約のため,試料をけん化した後の水層を石油エーテルで1 回抽出洗浄で調製した試験溶液と, 水層の2 回目の抽出洗浄液のみの試験溶液を比較した。2回目抽出洗浄試験液中にはビタミンEが1回抽出試験液の約10%残留することが確認され,抽出時間の短縮と試薬の節約はできなく,2回洗浄抽出法で測定を行った。ドッグフード中の総トコフェロールに占めるα-トコフェロールの割合は対照区で約97%,添加区では約99%となり,β,γ-トコフェロールは0.8~1.9%であった。対照区および添加区ともにβ,γ- トコフェロールの検出量がわずかで経時変化量が小さいので抗酸化効果はなかったと考えられる。

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