抄録
ネコに対する高蛋白食給与が尿中ストルバイト結晶数および尿不溶性成分濃度に及ぼす影響について検討した。健康な成ネコ8頭を用い,1期3週間のswitch-back法により実施した。実験食は粗蛋白質含量が乾物当たり29%(対照食)および55%(高蛋白食)の2種類のドライフードとした。高蛋白食給与により尿pHが低下する一方,飲水量には差がなかったにもかかわらず尿量が増加した。また,高蛋白食給与により尿中NH4+濃度は増加したものの,Mg2+ならびにPO43-濃度が低下したため,それらイオンの濃度積(ストルバイト活性積)は低下した。このことはストルバイトが結晶化しにくいことを意味し,実際,高蛋白食給与群では尿中ストルバイト結晶の濃度および日量が減少した。また,高蛋白食給与により尿の沈渣(総不溶性成分)の濃度は減少したが,その減少は尿沈渣中のHCl可溶性区分(無機成分)と同時にHCl不溶性区分(有機成分)の減少によるものであった。しかし,これらの成分は日量では減少しなかったため,尿中濃度の減少は尿量の増加によると考えられた。以上の結果は,健康ネコにおける高蛋白食給与はストルバイト尿石予防に有効であることを裏付けた。