Glucagon-like peptide-1受容体作動薬であるセマグルチドは,胃から吸収されるよう設計されているため,胃内環境や投与方法などの要因が,錠剤の崩壊および有効成分の溶解に大きな影響を及ぼす.本研究では,セマグルチド(Rybelsus®錠)の血漿中濃度における個人間および個人内変動に寄与する製剤学的要因を明らかにするため,実臨床で想定されるさまざまな投与条件下における錠剤の製剤特性を調査した.さらに,投与後の胃内の水分量の経時的変化や制酸剤による胃内pH変化の影響を評価するため,ラットを用いたin vivo実験を実施した.その結果,Rybelsus®錠は水の量に関係なく,水道水中で約1時間以内に完全に崩壊することが明らかとなった.しかし,嚥下補助剤の使用や,酸性溶液中では,錠剤の崩壊およびサルカプロゼートナトリウム(SNAC)の溶解は大幅に遅延した.さらに,水道水は急速に胃から吸収/排出されたため,少量の飲水量では錠剤が十分に崩壊しない可能性が示唆された.また,SNAC の胃溶解性を高めるために制酸剤を併用すると,セマグルチドの経口吸収がラットにおいて有意に増加したことから,制酸剤とセマグルチドの間に薬物相互作用が起こり得る可能性が示唆された.本研究の結果は,実臨床においてセマグルチドの血中濃度変動に影響を及ぼすと考えられる生理学的要因や製剤学的要因の一部を明らかにした.本研究は,リベルサス®錠の適切な投与ガイドラインの遵守の重要性を製剤学的見地から示す初めての報告である.