DPP-4阻害薬のビルダグリプチンは,本邦で現在使用されている9種類のDPP-4阻害薬の中で唯一,肝障害を引き起こす危険性があることから定期的に肝機能検査を行うことが添付文書で求められている.筆者らはこれまでに基礎研究および小規模な後ろ向き臨床研究を行い,ビルダグリプチンの肝障害発症リスク増大に併用薬が関与する可能性を見出した.本研究では医薬品副作用データベース(JADER)を利用し,DPP-4阻害薬における肝障害発症リスクを評価すること,およびビルダグリプチンによる肝障害発症リスクへの併用薬の影響を明らかにすることを目的とした.医薬品リスクマネジメントシステムであるDRiFOsを用いて,JADERの副作用報告のデータ解析を行った.各DPP-4阻害薬における肝障害の報告オッズ比(ROR)を算出したところ,全ての薬剤においてRORの95%信頼区間の下限値は1未満であった.このことから,ビルダグリプチンを含むDPP-4阻害薬は単独投与では肝障害発症リスクとの関連性が示されなかった.一方で,併用薬を考慮し解析したところ,ビルダグリプチンとの併用によって肝障害のRORが2倍以上増加する薬剤が16種類抽出された.以上より,ビルダグリプチン服用時に肝障害を発症する危険因子としてこれらの併用薬が関与する可能性が示唆された.