2020 年 9 巻 1 号 p. 143-152
【目的】色覚異常における現行の糖尿病治療用注入器の色彩識別の問題点を明らかにし,その改善案を示すために,2色覚者を対象とした色の分類実験から色覚異常における色の識別性について検討した.【対象・方法】1型2色覚者2名と2型2色覚者2名を被験者とし,持効型,持効型BS,速効型のインスリン製剤とGLP-1受容体作動薬の計13種から抽出した25色と,体系的に選定した177色からなる202色の色紙を評価刺激とした.被験者にそれらを同じ色系統に見えるいくつかのグループに分類して並べさせた.【結果】グループ数は1型色覚の方が2型色覚よりも少なく,色を大きく分類する傾向があった.異なる注入器本体とラベルに使用されている色を同じ色のグループに分類した組合せは,同一製剤以外に異なる製剤間でも多く見られた.【結語】正常色覚には異なる色でも,色覚異常者は同じ色のグループと判断される事例が多く見られたことから,臨床では意図したような識別が困難な事例が生じている可能性も考えられる.注入器の識別は,適切な識別色に加えて文字やマークを組み合わせて行う必要がある.