大学体育スポーツ学研究
Online ISSN : 2434-7957
研究ノート
経験豊富な体操指導者の指導観に基づく大学体育授業の設計と実践およびそのプログラム評価
前原 千佳 木内 敦詞堀口 文稲垣 和希
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2024 年 21 巻 p. 145-160

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抄録

本研究の第一の目的は,学修者の日常身体活動促進をめざした大学体育体操授業を,経験豊富な体操指導者の指導観である<身体性>,<有能感>,<自律性>,<関係性>(前原ほか,2023)を充足するよう設計するとともに,その実践を具体的に記述することであった.第二の目的は,須田(2017)による「学びの可視化手法」を用いて,学修者の授業コメントに基づくプログラム評価,すなわち授業者の意図した授業を学修者が認知しているかどうかを検証することであった.各回授業の前半にストレッチングなど<身体性>を重視した運動教材を扱い,後半は簡単に動けて楽しさを味わえるGボールや初めて挑戦するラートなどを用いて<自律性>や<有能感>の充足を意図した.授業全体を通して,グループ活動を多く取り入れて<関係性>を深めることを意図した.さらに,授業時間外の日常身体活動量を記録する運動セルフモニタリングシートを課題とした.学修者コメントを分析した結果,①自身の心身と向き合うストレッチングを活用したエクササイズの実践は<身体性>に,②未経験の運動教材の実践は<有能感>に,③日常実践が容易な運動の経験や日常生活での観察記録は<自律性>に,④ペアやグループによる軽運動の実践は<関係性>に,それぞれ貢献していたことが明らかになった.以上のことから,本試案授業は,経験豊富な体操指導者の指導観である<身体性>,<有能感>,<自律性>,<関係性>を満たし,授業意図を学修者が認知していたことが示唆された.今後は,学修者の日常身体活動への影響を検討していくことが求められる.

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© 2024 全国大学体育連合

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