抄録
ホスフィンに対して感受性の異なる二系統のコクヌストモドキ, Tribolium castaneum を用いてホスフィン取込み量について検討した. 大気下においては, 成虫, 踊, 幼虫の各ステージで, 感受性系のほうが抵抗性系に比べ取込み量は多かった. しかし, 無酸素下では両系統ともに取込みは認められなかった. グリシン緩衝液で磨砕後の昆虫組織でも, 大気下ではホスフィンの取込みが確認された. しかし, この場合は系統間の差異は消失した. 組織磨砕物の遠心分画を用いた試験で, 100,000g上清画分 (可溶性画分) にホスフィン取込み因子が存在することが判明した. この因子は酸素存在下で機能し, pH 5~9の間で安定で, 50℃以上ではかなり失活した. 以上の実験結果に基づいて, 抵抗性機構のスキームを提案した.