抄録
静岡県榛原郡の日本曹達 (株) 榛原農業研究所内の柑橘園から採集し, ヘキシチアゾクスで抵抗性および感受性への淘汰を繰り返したヘキシチアゾクス抵抗性および感受性ミカンハダニ (Panonychus citri MCGREGOR) を実験室内で混合することにより, 抵抗性の安定性を調査した. 感受性と抵抗性を50:50および30:70で混合した集団では, 第1世代ですみやかに感受性復元が認められたが, 10:90および2:98で混合した集団では第12世代でも感受性復元は不十分であった. 次に, ヘキシチアゾクスを7年間に19回連続処理し抵抗性発達が認められた柑橘園において, 調査樹6本に寄生するミカンハダニのヘキシチアゾクスに対する感受性変化と個体数変動を調査した. その結果, いずれの樹においてもヘキシチアゾクズの使用を中止した後33か月の間に感受性が徐々に復元した. またミカンハダニ雌成虫の個体数変動は, ヘキシチアゾクスの使用中止前と直後では樹ごとに異なったが, 使用中止約1か月後からは樹間で同調する傾向にあった. 圃場における感受性復元の原因は, 感受性個体群の柑橘園内での残存と他園からの移入, 不完全劣性であるヘキシチアゾクス抵抗性の遺伝, および抵抗性個体の繁殖能力の低下であると推察された.