日本公衆衛生雑誌
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資料
職域における喫煙対策に関する提言
植田 美津江
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2002 年 49 巻 3 号 p. 222-228

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抄録

目的 日本の職域における喫煙状況や喫煙対策の現状を経時的に把握し,今後の喫煙対策推進の基礎資料を得る。
対象と方法 健康保険組合連合会に加入している全国の健康保険組合に対し,企業内の喫煙率,企業内推進活動,社内禁煙(分煙)などに関する調査用紙と返信用封筒を郵送,用紙に記入と返送を依頼した。
調査は,1985年,1987年,1992年,2000年の計 4 回実施し,調査内容や設問の表現は1985年および1987年の内容に準じるようにした。
結果 4 回にわたる調査の対象となった健康保険組合数は,いずれも1,600~1,800数であったが,有効回答率はそれぞれ30%前後であった。調査票の返送率,情報の収集状況,喫煙対策推進状況などからみて,職域のたばこに対する関心が年々非常に高まっているとは言いがたかった。また,全体の喫煙率は低下傾向にあるものの女性の喫煙率は若干上昇してきている点は,全国の喫煙率の動向と同様であった。
全体に社内禁煙の取り組みの動きがあり,特に2000年調査では分煙室の設置が進んだが,それ以上の具体的な対策が著しく進んだ傾向は認めなかった。一方で,喫煙対策実施のきっかけで最も多かったのが「従業員の健康のため」であったこと,一旦社内で決まったことはきちんと守られる傾向が強いこと,喫煙対策の提案者が経営者・管理者であることなどから,企業の経営者や管理者が従業員の健康を尊重する意思を明確にした上で,喫煙対策を提唱すれば,社内分煙に代表される喫煙対策がさらに推進する可能性が示唆された。
考察 企業のトップリーダーに向けた,喫煙対策アプローチを推進していくことが職域の喫煙対策のポイントである。

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© 2002 日本公衆衛生学会
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